大判例

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福岡高等裁判所 昭和41年(う)501号 判決

判決理由〔抄録〕

原判決は、道路交通法第二八条第一項によれば、車両は他の車両を追い越そうとするときは前車の右側を通行しなければならないことになっているので、被告人の自動車の左側を追い越そうとした小柳は違法運転をしたものであり、また小柳は被告人の方向指示燈による左折の合図を認識しながら被告人の自動車の左側を追い越そうという違法運転をしたものであるから、被告人としては小柳の右違法運転を容易ならしめる注意義務はなく、被告人がバックミラーで小柳の自転車を認めることができなかったのも、小柳の自転車がバックミラーの視野外にあったためであって、被告人には併進または追尾する車両の有無を確認しなかったという注意義務違反はなく、被告人がなお一層車道の左側に寄って徐行したとしても、小柳の自転車は被告人の自動車を追い抜こうとして被告人の自動車の左側の狭隘な車道に向って直進していたものであるから、本件交通事故は避け得られたとは考えられず、結局被告人には注意義務違反はないものと解される。しかしながら、原判決が小柳が被告人の方向指示燈による左折の合図を認識していたというのは事実を誤認したものであり、道路の左端から約三米の間隔を保って進行する自動車の左側後方を進行する自転車が、交差点でないところで、進路を変えずに、その自動車の左側を通過して左側前方に出るのは、追抜きであって追越しではなく、道路交通法第二八条第一項の禁ずるところではないので、車道の幅員約九米の道路の車道の左端から約三米の間隔を保ち、しかも時速約二〇ないし一五粁で徐行する自動車の運転者は、たとえ左折の合図を前もってしていても、交差点付近でないので、これに気付かずに、そのような追抜きをする車両のあることを予想すべきであるから、交差点でないところで左折するに際しては、バックミラーによりそのような追抜きをする車両のないことを確認し、さらにバックミラーの視野外の併進車両については最徐行または一旦停車して追い抜かせ、事故を未然に防止する業務上の注意義務があるものである。したがって、単にバックミラーの視野内に他の車両を発見できなかったということのみで、ただちに左折を開始し、バックミラーの視野外にあった小柳の自転車に追い抜かせることをせず、本件交通事故を発生させた被告人は、過失の責任を免れないので、被告人には注意義務違反はなかったとして無罪の言渡をした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、原判決は破棄を免れず、論旨は理由がある。

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